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2025.10.24|ライフサポート情報
犬のあくびはストレスや病気のサイン?リラックスだけではない「あくびの意味」を獣医師が解説
大きなあくびをする愛犬の姿を見ると、思わず「可愛い」と感じたことがある飼い主様は多いのではないでしょうか。眠そうな表情やのんびりしたしぐさに、心が和む瞬間もあるかもしれません。
しかし、実はすべてのあくびがリラックスを表すものではありません。なかにはストレスや体調不良のサインとして現れているケースもあります。
そこで今回は、獣医師の視点から「犬のあくび」について詳しく解説し、飼い主様が日常の中でできる観察ポイントや病院でのサポートについてもご紹介します。
■目次
1.犬のあくびの基本的な意味とは?
2.ストレス性のあくびとは?
3.病気や体調不良が隠れているあくび
4.あくびが増えたときに飼い主様がチェックすべきポイント
5.動物病院でできる診断とサポート
6.ご家庭でできる観察と予防のポイント
7.まとめ
犬のあくびの基本的な意味とは?
犬のあくびは「眠い」「退屈」といった状態で自然と出る、ごく一般的な生理現象です。これは人間と同じで、身体がリラックスしているときや、活動から一息ついたときなどに見られます。
また、飼い主様に安心して寄り添っているときにもあくびが見られることがあり、これは心が落ち着いている証拠でもあります。なお、飼い主様があくびをしたときに、それが犬にうつることがあるという研究結果も報告されています。これは犬が飼い主様との絆を深く感じていることの現れと考えられています。
このように、あくびは犬にとって「自然な行動」であり、「異常」や「問題」とすぐに捉える必要はありません。
ストレス性のあくびとは?
一方で、あくびが「ストレス」のサインとして現れることもあります。これは「カーミングシグナル」と呼ばれる行動のひとつで、不安や緊張をやわらげようとする犬自身のセルフコントロールの方法と考えられています。
たとえば、以下のような場面で見られるあくびは、ストレス性である可能性があります。
・知らない人に会ったとき
・叱られたとき
・動物病院に来院したとき
・他の犬に接したとき
・不快な環境に置かれたとき
こうした場面でのあくびは、犬が「自分を落ち着かせようとしているサイン」かもしれません。特に頻繁にあくびをするようになったり、決まった場面で繰り返したりするようであれば、ストレスが関係している可能性があります。
病気や体調不良が隠れているあくび
あくびはリラックスやストレスだけでなく、身体の異常や病気のサインとして現れることもあります。以下のようなケースでは、体調不良が背景にある可能性があるため注意が必要です。
<呼吸器や心臓の病気>
呼吸器系や心臓に負担がかかる病気があると、体内の酸素が不足しがちになります。酸素を取り込もうとする反応として、あくびが増えることがあります。呼吸が荒い、疲れやすい、咳が出るといった症状を伴う場合は、早めの受診をおすすめします。
<神経系やホルモン異常>
脳腫瘍や甲状腺機能低下症などにより、神経やホルモンの働きに異常が生じることがあります。こうした疾患では「嗜眠(しみん)」といって、刺激がないとずっと眠ってしまうような状態になることがあります。あくびの頻度が極端に多く、活動性が低下している場合は、神経系の異常を疑う必要があります。
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<口腔内の異常>
口内炎や歯周病など、口の中に痛みや違和感があると、口を開けたがらない一方で、無意識にあくびが増えることがあります。口元を触られるのを嫌がったり、食事のときに食べにくそうにしていたりする場合は、動物病院での口腔内チェックが必要です。
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あくびが増えたときに飼い主様がチェックすべきポイント
「最近、あくびが多いかも?」と感じたときには、まず以下の点を観察してみてください。
・あくびの出るタイミング(リラックス中か、それ以外の場面か)
・あくびの頻度が以前と比べて増えていないか
・あくび以外に気になる症状がないか(食欲の変化、呼吸の荒さ、震え、無気力など)
特に、眠いわけでもなく、環境に変化がないのに頻繁にあくびをするようになった場合は注意が必要です。あくびの背景に体調不良が隠れている可能性もあるため、早めの判断が重要です。
動物病院でできる診断とサポート
動物病院では、問診や視診・触診に加えて、以下のような検査を通じて原因を調べます。
・血液検査:内臓機能やホルモンバランスを確認します。
・画像診断(CT・MRI):神経疾患や腫瘍の早期発見に有効です。
・レントゲン・超音波検査:呼吸器や心臓の状態を把握します。
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また、当院ではさらに先端画像診断機器を用いた精密検査を行っており、低侵襲で犬の身体に負担をかけない治療を心がけています。清潔で快適な院内環境を整え、飼い主様にも犬にも安心していただける診療体制を整えています。
なにか分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
ご家庭でできる観察と予防のポイント
犬の健康を守るためには、日常生活での観察が非常に大切です。以下のような習慣を意識してみましょう。
◆あくびのタイミングや回数を記録する
あくびの様子をスマートフォンで動画を撮ったり、頻度や回数をメモに記録したりしておくと、獣医師への説明に役立ちます。
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◆ストレスをためない生活を心がける
毎日の散歩や遊びの時間をしっかり取り、飼い主様とのふれあいを大切にしましょう。
◆安心して過ごせる環境を整える
静かな場所で休めるスペースや、決まった生活リズムが犬の安心感につながります。
また、異常を早期に見つけるためには、定期的な健康診断が有効です。特に病気が隠れている可能性がある場合、見た目の変化だけでは判断が難しいこともあります。
自己判断で様子を見るだけで済ませず、不安を感じたときは迷わず動物病院を受診してください。
まとめ
犬のあくびは、一見「可愛い仕草」に見えるものの、ストレスや体調不良のサインである場合もあります。すべてのあくびが異常というわけではありませんが、あくびの頻度や出るタイミングに注目しながら、犬の健康状態を日々観察していくことが大切です。
頻繁にあくびが見られるようになった、他の気になる症状がある、元気がないなど、少しでも不安な変化に気づいた場合は、早めに獣医師へ相談することで大きな病気を未然に防ぐことにもつながります。
当院では、CTやMRIを活用した精密な診断と、犬の負担を最小限に抑える治療を行っております。ご不安な点やお困りのことがあれば、どうぞお気軽に当院までご相談ください。飼い主様と犬の健やかな毎日を全力でサポートいたします。
<参考>
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/p01_250808.html
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