犬の門脈体循環シャントについて｜小型犬に多い病気

犬の門脈体循環シャント

千里桃山台動物病院

 

通常、動物は腸と肝臓が門脈という血管で結ばれていて、腸で吸収した栄養分を肝臓に取り込むとともに、有害な毒素を肝臓で解毒する役割を担っています。

 

門脈体循環シャントとは、門脈循環と体循環（心臓を起点にして体中をめぐる血管）の間に異常な血管（シャント）ができる病気で、小型犬に多いことが知られています。
腸から吸収された毒素が肝臓で解毒されずに全身をめぐってしまうため、重篤な症状が現れる場合もあります。

 

今回は犬の門脈体循環シャントについて、原因や症状とともに、当院での機器を用いた診断手法や、実際の治療法などを解説します。

 

 

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

門脈体循環シャントは、先天的（生まれつき）あるいは後天的に発生します。犬ではほとんどが先天性で、１歳未満の幼齢期に発症することが多いのが特徴です。
特にトイ・プードルやヨークシャー・テリアなどの小型犬には、肝外性（肝臓の外にある門脈で異常がみられるもの）の門脈体循環シャントが発生します。

 

一方でまれではあるものの、肝内性（肝臓の中に入った門脈で異常がみられるもの）の門脈体循環シャントも存在し、こちらはラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーといった大型犬で認められます。

 

また少数例ではありますが、肝硬変などによって門脈圧の高い状態が続いていると、後天的に発生することもあります。

 

症状

門脈体循環シャントでは、さまざまな症状が引き起こされます。
神経症状としては、ふらつく、壁に頭を押し付ける、ぐるぐると回り続ける、発作が起こる、昏睡状態に陥る、といった異常がみられます。これらは肝臓で解毒されるはずの毒素がそのまま血液を介して脳まで到達することで起き、肝性脳症とも呼ばれます。

 

それ以外にも、下痢や嘔吐といった消化器症状や、排尿障害や血尿といった泌尿器症状も現れることがあります。

 

診断方法

上記のような症状がみられたら、血液検査やX線検査、超音波検査などを用いて、どこに異常があるのかを調べます。門脈体循環シャントであれば、血中の肝酵素やアンモニアの値が上昇している場合があります。

 

ただし、正確に診断して後の治療（手術）に結び付けるには、CTやMRIなどの高度な検査が必要不可欠です。

CT検査やMRI検査など当院で実施している画像診断の詳細はこちらから

 

治療方法

治療は内科療法と手術に分かれますが、特に先天性の門脈体循環シャントであれば、手術によって根治を目指すことをお勧めします。（まれではあるものの、術後に再発が起こる可能性もあります）

 

手術では、開腹してシャント血管をリングなどで締め付ける方法や、X線透視下でシャント血管内にコイルを挿入することで血管を塞ぐ方法などがあり、シャント血管の位置によって選択しています。
なお、当院ではデジタル・サブトラクション血管造影法（DSA）が利用可能なため、より高精度にシャント血管を検出して治療に生かすことができます。

 

予防法やご家庭での注意点

犬に多い先天性の場合は予防が困難です。特にヨークシャー・テリアなどの好発犬種を飼育されている場合は、健康診断を受けて早期発見に努めていただくとともに、疑わしい症状が現れたらすぐに動物病院を受診しましょう。

 

まとめ

門脈体循環シャントは重篤な症状が生じる危険もありますが、先天性であれば手術によって根治が期待できます。また、当院では高度な検査機器を保有しているため、より詳細な検査を行った上で、手術を受けていただけます。

 

門脈体循環シャントについてさらに詳しく知りたい方は当院の症例報告をご覧ください。

先天性門脈体循環シャントについて

 

　　

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＜参考文献＞

Congenital Portosystemic Shunts in Dogs and Cats: Classification, Pathophysiology, Clinical Presentation and Diagnosis – PMC (nih.gov)