- 猫が食べない・口が痛そう|症状と原因、考えられる病気とは
- 季節の変わり目に注意|犬の鼻水(鼻汁、鼻炎)について
- 猫の慢性腎不全について|早期発見がカギ!
- 犬の血便について|原因は食べ物?ストレス?
- 犬の歯茎の腫れ|原因と対策を徹底解説
- 愛犬・愛猫が首をかしげる仕草は、かわいいだけじゃない?|健康サインを見逃さないために
- 愛犬や愛猫の痙攣・発作|飼い主様が知っておくべき対処法と予防策
- 【吹田市】犬と猫の腫瘍治療について┃当院の特徴をご紹介
- 【豊中市】犬と猫のための歯科をお探しの方へ|愛犬や愛猫の健康を守る動物病院
- 夏に急増する!?|愛犬や愛猫の皮膚トラブルについて
- 獣医師が警告!|愛犬や愛猫の嘔吐・下痢のガイド
- 犬と猫のおなかが張っている?|もしかしたら病気のサインかも?
- 犬や猫の歩き方が変、背中が痛そう…|もしかしたら病気の疑いがあるかも?
- 犬や猫の避妊・去勢の重要性について|早期に行うことで健康上にメリットが!
- 犬と猫の口臭と歯石除去(スケーリング)について|日々の口腔ケアが大切
- 犬と猫の一般的な腫瘍の種類と症状|早期発見が重要
- 犬の馬尾症候群について|大型犬のオスに多く見られる疾患
- 犬の肺葉捻転について|呼吸がしづらくなる病気
- 犬と猫の脳腫瘍について|中高齢の犬に多い病気
- 犬と猫の脊髄梗塞について|急に足が動かなくなる病気
- 犬と猫の脾臓腫瘤について|高齢の大型犬に多い病気
- 犬の門脈体循環シャントについて|小型犬に多い病気
- 犬の椎間板ヘルニアについて|ミニチュア・ダックスフンドに多い病気
- 犬と猫の肝臓腫瘍について|異常があっても症状が現れないことが多い病気
- 犬と猫のてんかんについて|診断方法や家庭での注意点を解説
- 椎間板ヘルニアの画像診断
- 先天性門脈体循環シャント
症例報告
椎間板ヘルニアの画像診断
当院における椎間板ヘルニアの画像診断
千里桃山台動物病院
〈はじめに〉
椎間板ヘルニアは、問診・臨床症状・神経学的検査によりおおよその診断は可能ですが、病変の部位・程度を把握するためには画像検査が必須です。
当院では、画像診断としてCT検査とMRI検査の両者を組み合わせています。まずCT検査にて椎間板ヘルニアの部位を確認し、MRI検査にて脊髄の評価とその圧迫の程度を診断しています。
CT検査は広範囲を短時間で撮影可能ですが、椎間板ヘルニアの8割しか診断できません。MRI検査はほぼ100%椎間板ヘルニアの診断が可能な上、脊髄軟化症の可能性の有無や椎間板ヘルニア以外の鑑別診断に有用です。しかし、一度に撮影できる範囲が限られており、時間がかかります。両検査を上手く見合わせることにより、短時間でより正確な画像診断を目指しています。
今回、椎間板ヘルニアと診断した症例を数例報告します。
症例1 ミニチュアダックスフンド 6才齢 ♂
T12-T13 右側椎間板ヘルニア
– 2日前から後躯麻痺を主訴に来院 両後肢CP(0)、DP(1)
CT・MRI検査 タイプ①
CT検査:脊柱管内にX線高吸収な占拠性物質が認められ、占拠率は約80% であった(図4)。
MRI検査:T2強調横断像にてシグナルボイドを示す物質により脊髄の左側への変位が認められた(図3)。矢状断像にてヘルニア部位前後の脊髄中心管の確認が可能(図2)であり、1椎体頭側の横断像にて脊髄の変性・浮腫認められなかった(図1)。
⇒CT検査のみで椎間板ヘルニアの部位・程度を診断可能
MRI検査により脊髄軟化症の疑いがないと診断
症例2 ミニチュアダックスフンド 7才齢 ♀
T13-L1 左側椎間板ヘルニア
– 昨日から後駆麻痺を主訴に来院 左後肢CP(0)、右後肢CP(1)
CT・MRI検査 タイプ②
CT検査:脊髄左側の硬膜外脂肪の消失が認められた(図3)。
⇒ヘルニアの部位は診断可能、程度の把握は困難
MRI検査:T2強調横断像にて高信号を示す物質により脊髄の右側への変位が認められた(図4)。病変による脊髄腔の占拠率は約50%で、周囲の脳脊髄液の信号消失、クモ膜下腔の狭小化を認められた。 T2強調矢状断像、冠状断像にて病変は頭側に1/2椎体、尾側に1/3椎体の範囲で認められた(図1、2)。
症例3 ミニチュアダックスフンド 11才齢 ♂
L1-L2 右側椎間板ヘルニア
– 数日前から後駆麻痺を主訴に紹介来院 両後肢CP(0)、DP(2)
CT・MRI検査 パターン③
CT検査:脊髄左側の硬膜外脂肪の消失が認められた(図2)。
MRI検査:T2強調横断像にて脊髄周囲の脳脊髄液の信号消失があり、クモ膜下腔の狭小化を認められた(図3)。範囲、程度が不確定のため造影T1強調横断像にて病変を確認した。病変は脊髄を左側に変位させ、脊髄腔の占拠率は約40%認められた(図4)。
また、病変より頭側の脊髄では中心管の拡張と周囲の炎症、浮腫疑う所見が認められた(図1)。
症例4 ビーグル 3才齢 ♂
L2-L3 右側椎間板ヘルニア 脊髄軟化症
– 昨日から後駆麻痺を主訴に紹介来院 両後肢CP(0)、DP(0)
CT・MRI検査
CT検査:脊柱管内右側にX線高吸収な物質が認められ、その占拠率は約40%であった(図4)。
MRI検査:T2強調横断像にて高信号を示す物質により脊髄の左側への変位が認められた(図3)。脊髄中央に灰白質の描出を疑う所見が認められた。(低磁場T2強調像では正常な脊髄の場合灰白質は認められない。)また、1椎体頭側の脂肪抑制T1強調横断像では灰白質の描出が消失されていた(図1)。
⇒脊髄の変性が認められた。脊髄軟化症を強く疑った。
症例5 フレンチ・ブルドック 4才齢 ♂
C2-C3 頚部椎間板ヘルニア
– 5日前から頚部痛、震えを主訴に来院神経学的検査では異常は認められず
CT・MRI検査
CT検査:脊柱管内右側にX線高吸収な物質が認められ、その占拠率は約30%であった(図3)。
MRI検査:T2強調横断像にてシグナルボイドを示す物質により脊髄の背側への変位が認められた(図4)。脊髄腹側の脳脊髄液の信号消失が認められた。 T2強調矢状断像、冠状断像にて病変は頭側に1/4椎体、尾側に1/3椎体の範囲で認められた(図1、2)。
各症例の経過
症例1 検査翌日、片側椎弓切除術実施。
当日朝に深部痛覚消失。
術後1週間は深部痛覚は認められなかった。
その後、リハビリ実施し1ヵ月後には起立可能。
現在は、ふらつきながらも歩行可能。
症例2 検査翌日、片側椎弓切除術実施。
術後1ヶ月経過した現在、時折左後肢のもつれは認められるが、日々回復している。
症例3 紹介元の病院にて手術実施。
症例4 脊髄軟化症を疑ったため、当日の手術は中止した。
上向性進行性の有無を神経学的検査にて判断した。
数日間症状の進行認められなかったので、
再度MRI検査実施し、進行の有無を評価した。
MRI検査:画像上脊髄軟化症の進行認められなかった
⇒片側椎弓切除術実施。術後3ヶ月経過した現在、深部痛覚の回復は見られず、自力排尿も出来ないが、車椅子で元気に日々生活している。
症例5 検査2日後、ベントラルスロット実施。
手術翌日から疼痛疑う症状は消失した。
術後半年経過した現在、経過良好である。