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症例報告

椎間板ヘルニアの画像診断

当院における椎間板ヘルニアの画像診断

千里桃山台動物病院

〈はじめに〉

椎間板ヘルニアは、問診・臨床症状・神経学的検査によりおおよその診断は可能ですが、病変の部位・程度を把握するためには画像検査が必須です。

 

当院では、画像診断としてCT検査とMRI検査の両者を組み合わせています。まずCT検査にて椎間板ヘルニアの部位を確認し、MRI検査にて脊髄の評価とその圧迫の程度を診断しています。

 

CT検査は広範囲を短時間で撮影可能ですが、椎間板ヘルニアの8割しか診断できません。MRI検査はほぼ100%椎間板ヘルニアの診断が可能な上、脊髄軟化症の可能性の有無や椎間板ヘルニア以外の鑑別診断に有用です。しかし、一度に撮影できる範囲が限られており、時間がかかります。両検査を上手く見合わせることにより、短時間でより正確な画像診断を目指しています。

 

今回、椎間板ヘルニアと診断した症例を数例報告します。

 

 

p15 椎間板ヘルニア図1-2

 

症例1 ミニチュアダックスフンド 6才齢 ♂

T12-T13 右側椎間板ヘルニア

–         2日前から後躯麻痺を主訴に来院 両後肢CP(0)、DP(1)

CT・MRI検査 タイプ①

 

p15 椎間板ヘルニア図2

 

CT検査:脊柱管内にX線高吸収な占拠性物質が認められ、占拠率は約80% であった(図4)。

MRI検査:T2強調横断像にてシグナルボイドを示す物質により脊髄の左側への変位が認められた(図3)。矢状断像にてヘルニア部位前後の脊髄中心管の確認が可能(図2)であり、1椎体頭側の横断像にて脊髄の変性・浮腫認められなかった(図1)。

⇒CT検査のみで椎間板ヘルニアの部位・程度を診断可能

MRI検査により脊髄軟化症の疑いがないと診断

 

症例2 ミニチュアダックスフンド 7才齢 ♀

T13-L1 左側椎間板ヘルニア

–         昨日から後駆麻痺を主訴に来院 左後肢CP(0)、右後肢CP(1)

 

CT・MRI検査 タイプ②

 

p15 椎間板ヘルニア図3

 

CT検査:脊髄左側の硬膜外脂肪の消失が認められた(図3)。

⇒ヘルニアの部位は診断可能、程度の把握は困難

MRI検査:T2強調横断像にて高信号を示す物質により脊髄の右側への変位が認められた(図4)。病変による脊髄腔の占拠率は約50%で、周囲の脳脊髄液の信号消失、クモ膜下腔の狭小化を認められた。 T2強調矢状断像、冠状断像にて病変は頭側に1/2椎体、尾側に1/3椎体の範囲で認められた(図1、2)。

 

症例3 ミニチュアダックスフンド 11才齢 ♂

L1-L2 右側椎間板ヘルニア

–         数日前から後駆麻痺を主訴に紹介来院 両後肢CP(0)、DP(2)

 

CT・MRI検査 パターン③

 

p15 椎間板ヘルニア図4

 

CT検査:脊髄左側の硬膜外脂肪の消失が認められた(図2)。

MRI検査:T2強調横断像にて脊髄周囲の脳脊髄液の信号消失があり、クモ膜下腔の狭小化を認められた(図3)。範囲、程度が不確定のため造影T1強調横断像にて病変を確認した。病変は脊髄を左側に変位させ、脊髄腔の占拠率は約40%認められた(図4)。

また、病変より頭側の脊髄では中心管の拡張と周囲の炎症、浮腫疑う所見が認められた(図1)。

 

 

症例4 ビーグル 3才齢 ♂

L2-L3 右側椎間板ヘルニア 脊髄軟化症

–         昨日から後駆麻痺を主訴に紹介来院 両後肢CP(0)、DP(0)

 

CT・MRI検査

 

p15 椎間板ヘルニア図5

 

CT検査:脊柱管内右側にX線高吸収な物質が認められ、その占拠率は約40%であった(図4)。

MRI検査:T2強調横断像にて高信号を示す物質により脊髄の左側への変位が認められた(図3)。脊髄中央に灰白質の描出を疑う所見が認められた。(低磁場T2強調像では正常な脊髄の場合灰白質は認められない。)また、1椎体頭側の脂肪抑制T1強調横断像では灰白質の描出が消失されていた(図1)。

⇒脊髄の変性が認められた。脊髄軟化症を強く疑った。

 

症例5 フレンチ・ブルドック 4才齢 ♂

C2-C3 頚部椎間板ヘルニア

–         5日前から頚部痛、震えを主訴に来院神経学的検査では異常は認められず

 

CT・MRI検査

 

p15 椎間板ヘルニア図6

 

CT検査:脊柱管内右側にX線高吸収な物質が認められ、その占拠率は約30%であった(図3)。

MRI検査:T2強調横断像にてシグナルボイドを示す物質により脊髄の背側への変位が認められた(図4)。脊髄腹側の脳脊髄液の信号消失が認められた。 T2強調矢状断像、冠状断像にて病変は頭側に1/4椎体、尾側に1/3椎体の範囲で認められた(図1、2)。

 

各症例の経過

症例1 検査翌日、片側椎弓切除術実施。

当日朝に深部痛覚消失。

術後1週間は深部痛覚は認められなかった。

その後、リハビリ実施し1ヵ月後には起立可能。

現在は、ふらつきながらも歩行可能。

 

症例2 検査翌日、片側椎弓切除術実施。

術後1ヶ月経過した現在、時折左後肢のもつれは認められるが、日々回復している。

 

症例3 紹介元の病院にて手術実施。

 

症例4 脊髄軟化症を疑ったため、当日の手術は中止した。

上向性進行性の有無を神経学的検査にて判断した。

数日間症状の進行認められなかったので、

再度MRI検査実施し、進行の有無を評価した。

 

p15 椎間板ヘルニア図7

 

MRI検査:画像上脊髄軟化症の進行認められなかった

⇒片側椎弓切除術実施。術後3ヶ月経過した現在、深部痛覚の回復は見られず、自力排尿も出来ないが、車椅子で元気に日々生活している。

 

症例5 検査2日後、ベントラルスロット実施。

手術翌日から疼痛疑う症状は消失した。

術後半年経過した現在、経過良好である。

 

p15 椎間板ヘルニア図8

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