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症例報告
犬や猫にも効果的?|動物再生医療の基礎知識と適応疾患
薬や手術だけでは回復が難しい病気に対して、「他の選択肢はないのだろうか…」と感じたことはありませんか?
近年、動物医療においても注目されている治療法のひとつが「再生医療」です。人の医療ではすでにさまざまな領域で応用されていますが、犬や猫でも再生医療によって改善が期待できる疾患が増えてきました。
とはいえ、「再生医療ってそもそもどんな治療なの?」「どんな病気に効果があるの?」と疑問に思われる飼い主様も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、犬や猫の再生医療の仕組みから治療の流れ、適応となる病気やメリット、注意点などをわかりやすく解説します。
■目次
1.再生医療とは?
2.再生医療に使われる「幹細胞」とは?
3.治療の流れ
4.再生医療が役立つ可能性のある病気
5.再生医療のメリットと注意点
6.まとめ
再生医療とは?
再生医療は犬や猫が本来持っている自然治癒力(=再生の力)を利用して、病気やケガによって損なわれた組織や臓器の機能を回復させる治療法です。従来の投薬治療では、病気の進行を抑えたり症状を軽減したりするのが主な目的でしたが、再生医療では傷ついた組織そのものを「修復・再生」することができます。
通常の薬は人工的に合成された成分や植物から抽出した成分を基にしていますが、再生医療では「幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞を使用します。これらは、犬や猫自身の体から採取する「自家細胞」や、健康な他の動物から提供された細胞を用いて治療が行われます。
もともとは人の医療で発展してきた治療法ですが、近年では動物医療でも研究と実用化が進み、実際の診療で導入されるケースが増えています。
当院でも、日本獣医再生医療学会に所属する院長が、再生医療のご提案を行っております。専門的な知識と経験をもとに、犬や猫の症状や状態に応じた最適な治療方法をご案内いたします。
再生医療に使われる「幹細胞」とは?
幹細胞は、骨髄や脂肪組織の中に存在し、体のさまざまな組織に変化できる力(分化能力)と、自分と同じ能力を持つ細胞を増やす力(自己複製能力)を兼ね備えています。
この幹細胞を損傷した部位に移植することで、傷んだ組織を修復し、機能の回復が期待されます。たとえば、傷ついた神経や軟骨、骨、筋肉などに対して、幹細胞がそれぞれの環境に応じた組織へと変化し、再生を助けます。
治療の流れ
再生医療は、主に犬や猫自身の細胞を使って行う「自家移植」が一般的です。以下のような流れで治療が実施されます。
1.初診・検査
まずは、症状や病歴など体の状態を詳しく確認し、再生医療が適応となるかを判断します。必要に応じて血液検査やレントゲン、エコー、CT・MRIなどの画像検査を行います。
犬と猫のCT・MRI検査について|検査の重要性や当院の設備などはこちらから
2.脂肪組織の採取
再生医療で使う幹細胞は、腹部などの脂肪から採取します。全身麻酔を使用し、動物に負担をかけないよう注意しながら行われます。
3.幹細胞の培養
採取した脂肪から幹細胞を取り出し、2週間ほどかけて培養・増殖させます。
4.幹細胞の移植
培養が完了した幹細胞を、症状に応じて注射や点滴で体内に戻します。多くの場合は日帰りでの対応が可能で、特別な入院は必要ありません。
このほかにも、あらかじめ保存されていたドナーの幹細胞や、すでに製品化された「動物用再生医療等製品」を使用する「他家移植」という方法もあります。いずれも注射や点滴で体内に戻す治療のため、高齢の犬や猫にも負担が少なく、安全性の高い選択肢として活用されています。
再生医療が役立つ可能性のある病気
現在、再生医療が活用されはじめている代表的な疾患には以下のようなものがあります。
<椎間板ヘルニア>
脊髄を圧迫することで、痛みや麻痺を引き起こす病気です。重度になると歩行が困難になることもありますが、幹細胞による神経の修復により、再び歩けるようになる可能性があります。
犬の椎間板ヘルニアについて|注意すべき症状や当院での診断・治療方針などはこちらから
<骨折の治癒促進>
骨折自体は自然に治癒しますが、年齢や体質によって治りが遅いことがあります。しかし、幹細胞を移植することで、骨の再生が促され、治癒までのスピードが速まることがあります。
<がん>
がんに対しては、幹細胞ではなく「免疫細胞」を用いた再生医療が行われることがあります。これは、がん細胞に対する攻撃力を高め、副作用が少ない治療として期待されています。再発や転移の予防にも効果があるとされ、生活の質(QOL)の維持にもつながります。
再生医療のメリットと注意点
再生医療のメリットは、以下のような点が挙げられます。
・従来の治療では効果がなかった病気にも、新たな可能性をもたらす
・体への負担が少なく、副作用がほとんどない
・高齢の犬や猫にも実施しやすい
しかし、再生医療はすべての病気に効果がある「万能薬」ではありません。治療の効果には個体差があり、現時点では適応となる疾患も限られています。また、医療としての研究がまだ進行中の分野でもあるため、必ずしも期待通りの結果が出るとは限りません。
そのため、再生医療はあくまで「治療の選択肢のひとつ」として捉え、従来の治療法と比較しながら、飼い主様と獣医師が一緒に最適な方法を検討していくことが大切です。
まとめ
再生医療は、従来の治療法で効果が見られなかった病気にも、新しい可能性を提供できる治療法です。犬や猫自身の自然治癒力を活かし、体への負担や副作用も少ないため、今後さらに注目されていくでしょう。
ただし、すべての症例に適しているわけではなく、従来の治療のほうが効果的な場合もあります。そのため、獣医師としっかり相談し、犬や猫にとって「今、何が一番ベストな治療なのか」を一緒に考えることが大切です。
「再生医療についてもっと知りたい」「うちの子に合うか相談したい」という飼い主様は、お気軽にご相談ください。
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