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犬や猫のけいれんは危険信号?|脳腫瘍や中毒などの原因と対策

突然、愛犬や愛猫が「体を震わせて倒れ込んでしまった」「けいれんのような動きをしていて、どう対処すればいいかわからない」そんな場面に出くわしたことはありませんか?

 

けいれんとは、自分の意思とは関係なく筋肉が収縮してしまうことで、体の一部または全身が震える状態を指します。原因として「てんかん」がよく知られていますが、実はそれ以外にも多くの病気や異常によって引き起こされる可能性があるため、注意が必要です。

 

今回は犬や猫に見られるけいれんについて、原因や特徴、緊急時の対応方法、診断に必要な検査内容などを解説します。

 

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■目次
1.けいれんを引き起こすてんかん以外の原因
2.非てんかん性けいれんの特徴
3.脳炎と脳腫瘍によるけいれん:特徴と治療方法
4.緊急時の対応:非てんかん性けいれんへのアプローチ
5.診断のための検査:非てんかん性けいれんの原因特定
6.まとめ

 

けいれんを引き起こすてんかん以外の原因

けいれんというと、まず「てんかん」を思い浮かべる飼い主様も多いかもしれません。しかし、てんかん以外にも、以下のような疾患が原因で起こることがあります。

 

<代謝性疾患>

低血糖や肝疾患、腎疾患、電解質などの代謝に異常が起こると、脳に悪い影響を与えて、けいれんを引き起こすことがあります。これらは、特に高齢の犬や猫、持病を抱えている子に起こりやすいです。

 

<中毒>

家庭内には、犬や猫にとって中毒を起こす危険物が数多く存在しています。たとえば、以下のようなものを誤って摂取した場合、中毒症状のひとつとして、けいれんを引き起こすことがあります。

 

・チョコレート
・キシリトール入りガム
・殺虫剤
・保冷剤(エチレングリコール含有)
・ツツジ科の植物 など

 

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<先天性の異常>

生まれつきの身体構造や臓器の異常によってけいれんが起こることがあります。特に、脳や心臓、代謝機能に先天性の異常がある場合は注意が必要です。

 

<高熱・感染症関連>

ウイルスや細菌、真菌、寄生虫などによる感染症や、40℃を超える高熱が長時間続くと、脳に影響を及ぼし、けいれんが引き起こされることがあります。猫ではコロナウイルスに関連する「猫伝染性腹膜炎(FIP)」、犬では「ジステンパーウイルス」などが挙げられます。

 

<外傷・ストレス関連>

交通事故や高所からの転落、頭部を強く打ったなどの外傷が脳にダメージを与え、けいれんを引き起こすことがあります。また、強いストレスや精神的な不安が引き金になる場合もあります。

 

非てんかん性けいれんの特徴

犬や猫のけいれんは、以下の2種類があります。

 

<てんかん性けいれん>

脳の異常な電気的活動によって、繰り返し発作が起こります。

 

<非てんかん性けいれん>

低血糖や肝臓・腎臓の異常、心臓のトラブル、神経の外的な刺激など、脳以外の原因によって、一時的にけいれんが起こります。

 

ただし、実際にどちらのタイプかを見分けるのは困難です。そこで、特に非てんかん性けいれんでよく見られる症状やタイプを知っておくことで、緊急時に冷静な判断がしやすくなります。

 

・全身性けいれん

意識を失い、横たわったまま手足を突っ張らせたり、泳ぐような動きをしたりします。さらに、よだれが大量に出たり、尿や便を漏らしたりしてしまうこともあります。

 

・局所的けいれん

体の一部分だけが震えるのが特徴で、意識はあります。たとえば、口のまわりがピクピク動いたり、片足だけがけいれんしたりするケースがあります。

 

また、全身性けいれんは、失神やめまい、バランス障害などと症状が似ていますが、これらの症状では手足のけいれんや震えは見られません。そのため、パタッと倒れてしまったときには、手足がけいれんしているかどうかをよく観察することが、症状を見分ける手がかりになります。

 

脳炎と脳腫瘍によるけいれん:特徴と治療方法

以下のような脳疾患が原因でけいれんが起こる場合、命に関わる可能性が高いため、迅速な対応が必要です。

 

<脳炎>

犬では自己免疫の異常などが原因で起こる「非感染性脳炎」、猫では細菌やウイルス、寄生虫などの感染が原因で起こる「感染性脳炎」が多く見られます。けいれんの他、ふらつきや意識障害、視力低下などを伴います。

 

■治療方法

非感染性であればステロイド剤や免疫抑制剤の投与、感染性であれば抗生物質や抗ウイルス薬、インターフェロンを使用します。場合によっては、抗けいれん薬を使用して症状の抑制も行います。

 

<脳腫瘍>

特に中〜高齢の犬や猫に発生します。腫瘍の発生部位によって症状は異なりますが、けいれんや意識障害、手足の麻痺、旋回運動(一方向にグルグル回る)、ふらつき、視力障害などが見られます。

 

■治療方法

外科的切除や放射線治療、抗がん剤治療のいずれか、あるいはこれらを組み合わせて行います。脳の障害が重度の場合には、抗けいれん薬、ステロイド剤や利尿剤、脳圧降下剤を使って症状を抑える治療を行うこともあります。

 

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緊急時の対応:非てんかん性けいれんへのアプローチ

けいれんが起こった際には、まず飼い主様が落ち着いて行動することが大切です。原因別の対応方法は以下の通りです。

 

<中毒性けいれんの場合>

中毒が疑われるときは、無理に吐かせようとせず、すぐに動物病院に連絡しましょう。摂取した物が分かれば、量や時間、写真などを控えておくと診察時に役立ちます。

 

また、動物病院へ向かう際は、犬や猫を安静な状態で運び、体調に変化がないかどうかをこまめに確認するようにしましょう。

 

<代謝性疾患によるけいれんの場合>

低血糖や肝疾患などが疑われる場合も、すぐに動物病院へ連絡してください。全身性けいれんを起こしている場合は、周囲の危険物を取り除き、むやみに手を出さないようにしてください。意識がないので噛まれる可能性があります

 

また、低血糖が強く疑われ、獣医師の指示がある場合に限り、ガムシロップや砂糖水を口に含ませる対応をすることがあります。

 

<脳炎・脳腫瘍が疑われる場合>

脳炎や脳腫瘍が疑われる場合も、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。これらの異常行動は動物病院での診察時に現れないことも多いため、スマートフォンなどで動画に残しておくと診断の手がかりになります。

 

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診断のための検査:非てんかん性けいれんの原因特定

けいれんが見られた場合は、問診や身体検査を行った後、必要に応じて以下のような検査を組み合わせて行います。

 

血液検査:肝臓・腎臓の状態、血糖値、電解質バランスなどを評価します。
レントゲン検査:内臓の形状や異常の有無を確認します。
超音波検査:腹部臓器や心臓の状態を確認します。
神経学的検査:意識レベルや反射、歩行状態などを確認します。
CT検査・MRI検査:脳や脊髄の状態を詳しく見るために、実施されることがあります。

 

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まとめ

けいれんは、てんかん以外にも中毒や代謝異常、脳疾患などさまざまな原因で起こる可能性があります。特に非てんかん性けいれんには命に関わる病気が隠れているため、少しでも異変を感じたらすぐに動物病院を受診することが大切です。

 

日頃から犬や猫の行動や体調の変化に目を配り、万が一けいれんが起きたときには冷静に対応できるよう備えておきましょう。飼い主様の早期の気付きと行動が、愛する家族の命を守る第一歩となります。

 

当院では、けいれんの原因特定と適切な治療を迅速に行えるように、神経疾患に対する検査と診療体制を整えております。ご不安なことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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