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症例報告
見逃すと命に関わることも!|犬や猫の急性膵炎と慢性膵炎
愛犬や愛猫が突然、嘔吐や下痢を繰り返したり、食欲がなくなったりしたことはありませんか? このような症状は、胃腸炎などの軽い消化器疾患でも見られますが、実は「膵炎」のサインである可能性もあります。
膵炎は膵臓が炎症を起こす病気で、急激に進行する「急性膵炎」と、徐々に進行する「慢性膵炎」に分けられます。特に急性膵炎は、短期間で重症化し、命に関わることもあるため、いかに早く異常に気づき、適切な治療を受けるかが重要です。
また、揚げ物など脂肪分の多い人間の食べ物を盗み食いしてしまったり、強いストレスのかかる環境に長時間さらされたりすることは、膵炎の引き金となる可能性があります。こうした原因を排除し、膵炎のリスクを軽減することが大切です。
今回は犬や猫の急性膵炎と慢性膵炎について、早期発見のポイントや治療方法、再発予防などを解説します。
■目次
1.膵炎の危険信号 – すぐにチェックを!
2.膵炎の正確な診断方法
3.膵炎の治療方法と回復までの道のり
4.ご自宅での注意点と再発予防
5.まとめ
膵炎の危険信号 – すぐにチェックを!
膵炎は早期に発見し、適切な治療を行うことが大切です。特に急性膵炎は進行が早く、重症化すると命に関わるため、以下の症状が見られたらすぐに動物病院を受診してください。
<初期症状>
・嘔吐
・下痢
・腹痛
・食欲不振
<犬によく見られる症状>
特に膵炎は、強い腹痛を伴うことが特徴的です。犬の場合、痛みを感じると以下のようなサインを見せることがあります。
・お腹が張る・触られるのを嫌がる
・散歩を嫌がる
・体を動かすのを避ける
・鳴き叫ぶ・震える
・「お祈りのポーズ」をとる(腹痛を和らげるためにお尻を高く上げ、前足を伸ばした独特な姿勢をとることがある)
<猫に見られる症状>
猫の場合、比較的症状が分かりにくいため、発見が遅れてしまうことがあります。そのため、以下のような変化に注意することが大切です。
・食欲不振
・黄疸(皮膚や白目の部分が黄色く変色する)
・体重減少
・活力低下
こうした症状に早く気づくことで、膵炎の早期治療につながります。普段の様子と比べて少しでも異変を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
<重症の場合>
また、急性膵炎を放置すると、炎症が急速に広がり、数日以内に命の危険が迫ることもあります。重症化すると、以下のような合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
・ショック状態(血圧の急激な低下)
・急性腎不全(腎臓の機能低下により尿が出なくなる)
・播種性血管内凝固(DIC)(全身の血液が固まりやすくなり、出血を引き起こす)
・多臓器不全(肝臓や腎臓などが機能不全を起こす)
これらの合併症を防ぐためには、症状が軽いうちに診察を受け、早期治療を開始することが非常に重要です。
膵炎の正確な診断方法
膵炎の診断には、以下のような検査を行います。
・血液検査(膵酵素の値を測定)
・超音波検査(膵臓の腫れや炎症の有無を確認)
・膵特異的リパーゼ(PLI)測定(診断精度が高い)
・レントゲン検査(他の病気を除外するための検査)
これらの検査を組み合わせることで、膵炎の正確な診断が可能になります。
膵炎の治療方法と回復までの道のり
膵炎に特効薬はないため、基本的な治療方法は以下のように症状に応じた対症療法になります。
<輸液療法>
脱水やショックが見られる場合など、全身状態を改善するために行います。
<鎮痛剤>
お腹の激しい痛みをやわらげるために投与することがあります。
<制吐剤>
嘔吐が見られる場合に投与します。
<絶食>
制吐剤が効かず、激しい嘔吐を繰り返す場合のみ絶食が行われます。ただし、絶食を始めてから遅くとも48時間以内には食事を再開することが推奨されています。
また、猫の場合は絶食をすると「肝リピドーシス」という病気を引き起こすリスクがあるため、絶食は基本的に行いません。
<食事療法>
犬の場合は膵臓になるべく負担がかからないように、食餌を超低脂肪食に変更します。ただし、猫の場合は低脂肪食を与える必要はなく、消化が良く栄養バランスのとれた食餌を心がけます。
急性膵炎の場合、軽度であれば通院治療で済みますが、多くは入院が必要になります。重症化していなくても、中等度の場合は退院までに最低1週間はかかり、重症化している場合はさらに長期に及びます。ただし、適切に治療を行うことができれば、完治が望めます。
一方で慢性膵炎の場合、多くは通院治療を行いますが、基本的に完治することはないため、生涯にわたって治療を行う必要があります。
ご自宅での注意点と再発予防
膵炎は再発しやすい病気です。そのため、食事管理と生活習慣の見直しを行い、再発を予防することが大切です。
<食事管理のポイント>
高脂肪のフードや食べ過ぎ、おやつの与えすぎなどは膵臓に負担をかけてしまいます。そのため、低脂肪かつ栄養のバランスがとれた総合栄養食を適量与えるようにしましょう。慢性膵炎の場合は食事療法を続けていく必要があるため、かかりつけ医の指示に従うようにしてください。
<適度な運動を取り入れる>
肥満は膵炎のリスクを高めるため、日頃から運動をする習慣をつけましょう。日々の散歩だけでなく、室内遊びを充実させたり、ドッグランを活用したりするとより良いでしょう。
<定期検査の重要性>
どんなに気を付けていても絶対に予防できるとは限りません。そのため、動物病院で定期検査を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう。
万が一、急性の消化器症状や腹痛が見られた場合は、再発のサインである可能性があります。そのため、膵炎が疑われる症状が見られたら、様子を見ずにすぐに動物病院を受診しましょう。
まとめ
犬や猫の膵炎は決して珍しい病気ではありません。特に急性膵炎は緊急性が高く、治療を行わなければ数日で重症化してしまい、最悪の場合命を落としてしまうこともあります。ただし、重症化する前に治療を開始することができれば元気を取り戻せる可能性が高いため、早期発見・早期治療を行うことが大切です。
本記事の内容を参考に、万が一愛犬や愛猫の元気がなかったり消化器症状が見られたりした場合は、早急に動物病院を受診するようにしましょう。
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